『人生会議』 とは
「人生会議」という言葉を聞いたことはありますか?
もともとは医療の現場から発生した取り組みで、「アドバンス・ケア・プランニング」と呼ばれるているもので、
『将来の変化に備え、将来の医療及びケアについて、本人を主体に、そのご家族や近しい人、医療・ ケアチームが、繰り返し話し合いを行い、本人による意思決定を支援する取り組みのこと。(日本医師会HPより)』
をいいます。
このアドバンス・ケア・プランニングのことを、厚労省が「人生会議」と名付けて、広めようとしています。
本来は、医療関係者の間で「将来の医療・ケアについて、本人を人として尊重した意思決定の実現を支援するプロセ スである。」と説明されています。ようするに「将来の医 療ケア」について「きちんと対話すること」です。
もしものときに、最後まで本人の意思にのっとった医療ケアを行なえるように、家族や友人、医療従事者に、その人の価値観や大切にしていることを伝えておくための手段です。
エンディングノートのこと?
この人生会議(ACP)と似たもので、一般的に最も浸透しているものとして、「エンディングノート」や「終活」があります。
エンディングノートでは、お葬式やお花をどうするかとか、年金・保険・相続といったお金のことについてどうするか、をつらつらと書き留めていきます。他には、自分に「もしも」のことがあったときの連絡先リストや、連絡先となる家族の情報、さらには、家族の一員であるペットをどうしてほしいか、などがノートの項目にあります。
エンディングノートは、今ではバラエティも豊富で 1,000円程度で買えるし、気軽に始められるのが一番のメリットです。
しかし、エンディングノートの場合、基本的にひとりで書き留めるものなので、その存在を周囲の人たちが知らなければ、けっきょく誰もその中身を知らないまま効果を発揮できずに終わってしまいがちです。
人生会議は、もしものための「話し合い」
一方、「人生会議」は、そもそもは将来の医療選択について、リビングウィルや終末期医療における事前指示書のために始まったものですが、近年では将来の医療のことだけにとどまらず、その人自身の「思い」を反映した生活全般における対話が重視されるようになっています。さらには、「お金」のことについても、その人の思いや考えをくみ取っていこうと進化しています。
つまり人生会議は、将来選びたい、あるいは選びたくない医療ケアだけでなく、近しい人との関係、生活やお金のことまで、その人の価値観や人生そのものについての思い・考えを知るためのものです。
人生会議をすることで分かることは、だいたい 4 つに分けられます。
・医療・介護のこと
・生活・お金のこと
・人間関係
・その人の価値観
なかでも、生活・お金に関すること、これは切っても切り離せないことがらです。
「自宅で最期まで過ごしたい」という希望があっても、自宅で最期を迎える上で必要な医療介護には、やっぱりお金が必要であり、お金の話を無視しては本人の意思を尊重することも不可能です。
また、人生会議を経験することで、相続時のトラブルを防ぐことができるのも大きなメリットです。
大切な人に、 もしものことが起こっても
あなたの親御さんがこの先の人生をどうしていきたいのか、理解できていますか?
核家族化がさらに進んで「超」核家族化となり、
戸籍上 は家族・親族がいても、
事実上の「おひとりさま」や「おふたりさま」でいる人がこれからどんどん増えていきます。
だからこそ、いまのうちに大切な人のことをちゃんと理解しておくことは、今まで以上に欠かせないことになっていると思います。
では、親きょうだいや家族、患者さんや施設利用者さんなど、その人が大切にしていること・価値観ってどんなことでしょうか?
家族や友人などの人間関係や、日々の生活そのものに答 えがあると考えています。それは、対話の中で相手が何気なく発した言葉から、「ああ、この人はこんな価値観を持っているんだな」と意外な一面を発見することと似ています。
大切なのは、「話をすること」。
大事なことなので、もう一度言います。
人生会議は「対話」です。肩ひじ張る必要はありません。
「もしものときのこと」について、ひとりで抱え込むのではなく、「話をしようよ」というものです。まちがっても、家族全員を招集して、テーブルを囲みながら、「では、これより会議を始める」というものではありません(そういうのが大好きな人もいますが)。
「こんな話、なかなか切り出せないよ」と尻込みしてないで、何かのついでにでも一歩踏み込んで、「あのさ、もし何かあったら、俺たち(私たち)はどうしてあげればいい?」と切り出してみよう、というものです。
「人生最後の日に食べたいものって何?」くらいフランクでもいいくらいです。
ちなみに、この「人生会議」を気軽に行えるように開発されたカードゲームとして、「もしバナゲーム」というものもあります。ゲーム形式でやってみると、それぞれの想いの整理や理解がしやすくなりますし、家族や友人で楽しみながら共有できると思います。
ほかにも、自分が(親が)送ってきた人生についての自分史を作ってみたい、エンディングノートを書きたいから(書いておいて欲しいから)、ということをきっかけに、「人生会議」をやってみるというのもいいかもしれませんね。
自分のライフプランは自分でデザインする
「もしものとき」を考えたとき、
施設への入所とか、治療方針はどうする?とか、遺言は?など、いろいろな制度について考えると思います。
他にも、成年後見制度や任意後見制度、見守り契約、最近では「死後事務委任契約」というものもクローズアップされています。
でも、「どの制度を使ったらいいんですか?」と、制度そのものが理解できていないし、解ったとしてもどう活用したら良いのかわからない…。そんなふうに、踏みとどまってしまう人がほとんどかもしれません。
「制度」は単なる手段であって、「目的」ではありません。
「あなた自身」がこれまでどう生きてきたのか、何を大事にしてきたのか、これからの人生をどう生きたいのか、何を守っていきたいのか。自然にわき出る気持ちを言葉に出してみるのです。
「人生会議」のような対話を重ねることで、その人自身の心の思いがクリアになった時はじめて、先に挙げた「制度」を上手く使いこなすことができ、今後の人生の心強い伴走者となってくれます。
これからの人生をより意義のあるもの、充実したものにするために、いちど「人生会議」をやってみてはいかがでしょうか?
